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屋根辞典 〜屋根に関する用語集〜
屋根に関する基礎的な用語から、専門的な用語まで屋根に関連する用語を幅広く収録してあります。
また、屋根部位や屋根形状についても絵つきで詳しく説明してあります。
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さ行
塩焼瓦(しおやきがわら)
  焼成の最終段階で、食塩を投入して焼いた瓦で、吸水率が低く凍害に強く変色性も少ない。その色から赤瓦とも呼ばれている。1100〜1200℃で10時間程行われる中だきの後、たき口から食塩と燃料を交互に投入する。投入される食塩は1万枚の瓦に対して160kgほどである。数回に分けて食塩を投入しさらに練らしだきを3時間程続ける。冷却は徐々に行い、火入れから9日目頃に窯だしを行うのが理想的であるとされている。投入された食塩は熱で分解されガス状となりさらに水蒸気と反応し、酸化ナトリウムと塩化水素に分解される。さらに酸化ナトリウムが粘土中の珪酸とアルミナと化合し、珪酸ナトリウムとなり、これが赤褐色のガラス状の皮膜となる。この化学反応プロセスは、複雑でその制御は難しいことなどから、塩焼瓦の生産量は減少している。
   
ジェラール瓦
  明治初年にフランス人アルフレッド・ジェラールが日本で製造したフランス型の瓦で赤瓦といぶし瓦があった。彼は明治政府の雇ったお抱え外国人のひとりであったが、洋風建築に使う瓦の需要を見越して横浜でフランス型瓦の製造を始めた。明治6年(1872年)頃横浜元町にわが国ではじめての土練機や製瓦機を使った近代設備を持った製瓦工場を作った。わが国の一般の瓦業者が近代設備を導入するのは、ジェラールに遅れること50年経ってからである。
   
地瓦(じがわら)
  軒瓦袖瓦など特殊な部分を葺く瓦を役瓦、一般の部分を葺く瓦を地瓦という。本葺き形では平瓦丸瓦が、和形では桟瓦が地瓦で、一つの建物で使用する数も多く、形状も役瓦に比べシンプルで量産しやすい。
   
敷瓦(しきがわら)
  床や地面に敷く瓦で磚(せん)、甎(せん)ともいう。中国はじめ東洋では広く用いられており、表面に模様があるものもある。わが国では寺院だけでなく平城京、平安京の宮殿でも使われた。建物と平行に敷いたものを布敷(ぬのじき)、45°の方向に敷いたものを四半敷(しはんじき)と呼ぶ。
   
シーサー
  沖縄の伝統的な赤瓦屋根に載せられる魔除けの獅子で、シーサーが火を食べるので火除けとして使われている。獅子瓦とも呼ばれているが、鬼瓦と違って棟ではなく、屋根の上に置かれる。シーサーは新築のお祝いに瓦職人が一つ一つ作ったと言われている。シーサーは鬼瓦のように粘土から直接作る場合と、割れた瓦と漆喰とで作るものとがある。
   
獅子口(ししぐち)
  棟の両端に使う棟飾りで鬼瓦の一種であるが、とくに御所の重要な建物使にわれていることから、御所鬼とも呼ばれている。将棋の駒のように五角形をした箱の上に、経の巻と呼ばれる3本または5本の丸型の巴瓦を載せたものである。箱の胴部分には綾筋(あやすじ)と呼ばれる山形の平行線が付けられている。さらにその下に経の巻の巴文が付けられている。
   
鴟尾(しび)
  棟飾りの一つで棟の両端にちょうど沓(中国から伝わった靴)を立てたような形をしている。この形から沓形(くつがた)とも呼ばれている。もともとは魚あるいは鳥からきたものと言われている。悪魔除けや火除けの目的から付けられたもので、飛鳥時代に大陸から伝わり、大規模な建築の大棟で使われた。必ずしも瓦だけでなく銅や石でも作られた。現存する最古の瓦の鴟尾は、唐招提寺金堂の西側のもので、奈良時代の創建当時のものである。棟飾りとしては最古の形式のもので、これが鬼瓦や鯱などに発展していった。
   
鯱(しゃちほこ)
  棟飾り瓦の一つで魚の形をしている。頭は竜のようで、背上に鋭い刺を持つ想像的海魚で、海にすむことから防火の効き目があるという。しゃちとも言い、鴟尾が発展したものである。魚形の棟飾りは中国では宋時代にあらわれるが、日本では室町時代から登場している。インドのマカラの影響があったものと言われている。初期には仏閣で使われていたが、桃山時代からは城の天守閣や櫓で多用されるようになった。名古屋城の金の鯱が有名で、これは高さ258cm、重さ1215kg。使われている18金の重さは43.4kgとなっている。
   
蛇の目軒瓦(じゃのめのきがわら)
  万十軒瓦(まんじゅうのきがわら)の一種で、小巴の形が蛇の目の形をしている。丸い巴の周囲を輪のように残し内側を彫り込んでいる。蛇の目は環状の文様の一つで、正式には輪貫(わぬき)と呼ばれる。
   
素地(しらじ)
  荒地(あらじ)を瓦の形に成型し、乾燥させたもの。瓦の寸法精度を確保しようとすると、乾燥の方法はとくに重要である。厚い部分は乾燥速度が遅く、乾燥しやすい薄い部分は引っ張られ開きかげんになったり亀裂が生じたりする。そのため成型の際に、素地に予想されるねじれの反対のタメをあらかじめいれておき、乾燥してちょうど予定の形状になるようにしておく必要がある。タメのいれ方は使う土の材質によって異なる。とくに平面性と寸法精度を必要とする敷瓦の場合、素地をどう精度よく作るかは問題で、300mm角以上になると難しく価格も極めて高くなる。
   
地割(じわり)
  瓦の割り付けを地割という。一般には桁行き方向の割り方であるが、桟瓦の場合、流れ方向の瓦の割り付けも地割と呼ぶ。つぎに桟瓦の場合の地割の基本的なテクニックを述べることにする。
(1)屋根の形に応じてブロックに分け、最も難しい部分から始める。
(2)流れに向かって左側から始める。
(3)標準きき幅をもとに割り付けるが当然端数が出る。
(4)端数の処理は、両袖瓦の出で調整する方法、桟瓦の葺き寸法を調整する方法、
両者を併用する方法などがある。
   
真空土練機(しんくうどれんき)
  土練は原土(げんど)に適当な水を加えて練ることで、機械化される以前は足で練っていた。真空土練機では足で練ったと同様な効果を出すよう、軸の羽の回転と合わせ縦横の回転も併用して、さらにラミネーション(一方回転にともなううねり波層)の解消のため、二重ドラムの間に粘土を通して送り出すような機構になっている。真空土練機はその内部を真空にして、粘土中に空気を含めないようにしている。
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